愛と生きる意味

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ファックしてください、ジーザス!(2022-10-14)

 2020年のアメリカはまさに黙示録の狂騒が全土を覆った年であり、虐殺器官もかくやというありさまだったが、そんな年にも一粒の小麦からは万の小麦の実がなり、神の栄光は絶えぬまま黒人は殺され、黒人は殺され、殺され!殺され!悪意を持った白人に殺され!悪意を持った白人に殺され!息を殺され!街は破壊され、銃を持った屈強な男たちが街を守るようになった。

 野蛮の国アメリカで疫病が蔓延し、神の栄光の国アメリカで全ての悪徳が実現するのは当たり前だった!アメリカという生娘はいつも神の栄光の名のもとにジーザス・クライストに組み伏せられている。それはとても大きな男根で、アメリカはいつも媚態を顔に浮かべ「ファックしてください、ジーザス!」と叫ぶ。ジーザス・クライストが己が自慢の男根でこの余りにも豊かで真の意味での豊穣さに溢れた地を突くたびに、野蛮な乳房を揺らすアメリカの女神よ!それは自由の女神ではない。アメリカとは自由の国でありながら自由ではない。それはジーザス・クライストにファックされることでしか成り立たない破滅的な現実なのだ。ああアメリカよ!その不幸な女性はいつもライフル銃で身体を貫かれている。銃創から噴き出す血はいつも赤黒くそれでいて気高い。内側で抱えきれなくなったエネルギーが一気に表出してマグマ状の世界を作る。毒々しい赤薔薇の、いつも生産的で、破壊的で、大量の血の奔流に呑み込まれ、汚濁し、神の精液に塗れ、なんと美しいことだろうか!ああ偉大なるアメリカよ!ライフル銃とは神なのか?否、断じて違う!ライフル銃とは彼らが彼らたることである。神は男根しか持たぬ。神は銃を持たぬ。ならアメリカ、アメリカは?アメリカは男根を作った!ライフル銃こそがアメリカならばライフル銃とはアメリカの男根である。自傷こそがアメリカならば、アメリカとは自傷と痛ましい滅亡が運命づけられているのか?アメリカよ。俺にもファックさせろ。

 黒人青年の俺は街を歩いていた。俺は前世には日系収容所に閉じ込められそこで死んだ。その前世はイタリア移民で、その前前世は苦力で、やはりそのまた前々前世は奴隷主にファックされる南部の女だった。アメリカとはファックである。ジーザス・クライストはアメリカをファックする。奴隷主は私をファックする。栄光につながる道はチャイニーズをファックする。市民の憎悪は日系移民をファックした。ファックこそがアメリカならば、やはり俺はアメリカにファックされ続け、それゆえにこそ俺はアメリカをファックしなければならないだろう。息の出来ない自分の醜態を想像しながら身体をびくりと奮わせる。あまりにも甘美で、甘美であるがゆえに悍ましい死を思う。あの差別主義者(マザーファッカー)はどんな風に俺をファックするだろう?またファックしてきただろう?街は一昨日の騒乱で破壊されている。全ての生活用品店が焼け、店は掠奪に遭い、FOXニュースは相変わらずそれを我われの暴力に帰する。何ということだろう!ファックされるドナルド・トランプ。トランプにファックされる黒人たち。ファックされた女の遺体。ジーザス・クライストにファックされた白人。か弱い共産主義者。同じように貧者をファックするバラクオバマ。ファックするジョージ・ブッシュ。ビルクリントン、ロナルドレーガン、リチャードニクソン。ファックの螺旋、螺旋、螺旋。螺旋!ジョーディマジオの垢抜けない精悍さを想い出して俺は気を鎮める。またシドニーポワチエを想い出して気を強く保つ。ファック、ファック、ファック。ファック!ファック!

 気づけば俺は街の中心に佇んでいた。否、正確には2日前まで街の中心だったところだ。この小さな街にもホールフーズがあって、ウォルマートストアがあった。アマゾンの倉庫も93km先にあった。ここは町の小さな庁舎があった。ハンバーガー店もあった。暴徒がファックして焼いたのだ! 真に怒れる黒人と、ごっこ遊びの白人のナードが。そしてKKKが!俺のたなごころだけ白く白人のような手には白い精液がべっとりと着いている。俺は興奮している。これは極めて程度の低く、それでいて大いなる破壊に対する正統な興奮である。歴史の螺旋に。ファックに。組み伏せる神よ!ジーザス!俺を今すぐファックしてくれ!

 ポリスは何度も執拗に俺を付け回し俺を囲い殺そうとうかがっていた。俺の手はすでに自分の精液に塗れ汚れる機会を失っている。すでに俺はファックされた身で、またファックもしている。女を抱く。ファックする。頭のなかを流れるカニエウェストのエブリアワー。俺は初めからすべてを知っていた。セックスを生まれたときから知っていたように、神の愛を知っていた。神のファックを知っていた。ああ栄光のカニエウェストが埠頭に立つように、ステージの先頭に立つように、モーセが海を開くように 今こそ俺は町の真ん中で神の栄光に身を浸すことができる!神よ、俺こそがファック。俺こそが真の信徒だ。我がまなこは神の栄光の来るを見———————————

 ジョン・キール、23歳の白人男性はそこら中で連続強姦殺人を起こし、州の枠を越えFBIに追われる身となっていたが、このほど中西部の中規模な町で射殺された。この残忍な人種差別主義者は黒人、黄色人種、ヒスパニックなどの有色人種の女性を強姦後絞殺し、磔にした死体を遺棄して逃走するという極めて異常性、残虐性に満ちた犯罪行為を行なっていた。その最期だが、暴徒化したBLMに破壊された町でまたひとり女性を強姦していたのを警察に見つかったが、ひとしきり逃げ回ったあと、意味不明で支離滅裂な、演説にも説教にも似た何かを叫びながら天を仰ぎ、駆けつけた警官に蜂の巣にされながら死んだという。