足立健

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ボツにしたやつ①

①夜空 2022年12月頃


詰襟を立てて寒い夜の道を歩いていた
街が残りの灯りを落とすたびに、どんどん世界は狭まっていって行く あるいは広がっていく
街には私以外誰もいないようだった 自分の罪を数えながら白い息を吐くと、街灯に反射した悔恨が形となって、夜道を彩っているようにも見えた

あなたは今どこで何をしていますか 夜空に問いかけてもなにも答えはかえって来なかった 私は満足して歩き出す あの威勢の良さに救われていたのはどちらの方か

いつのまにか私は到着できていたようだった 目線を下げるとどこまでも街が広がっていた
何かから身を守るように身を丸めた家々が建ち並ぶ それはいつもの私のようで、あのときの後悔を振り切るように自分の手を強く握った 

だんだんすり切れ続けていくのなら、そのたびにあなたのかたちは変わっていくのかな 天上では、紡がれなかった思い出の数々がまばゆく煌めいていたが、それは何よりも美しく思えた

②新しい天使(有限さについて) 2022年11月頃


痛みについて深く思う。痛みがやってきて、そこに牡丹のような惜別だけがあって、痛みを感じる。あるいは選択について思う。ここで私はこの言葉を選択して、在ることを選択したのだった。天使が降る。天使はやってくるわけでもなく、ただここにあるだけというわけでもなく、かと言ってやって来ないという訳でもない。ただ天使があって、天使はそこにある。痛みは滑らかな旋律のようにほどけていき、それでも心のなかを巣食いつづける。だんだん相を変えていく風景の流れに、境界が溶け出していく空に、広さだけがある世界で、あなたへの想いだけを抱きしめている。

③題名未設定 2023年1月頃

だんだん全部忘れていくから執拗に猫を撫でていた この手触りが死んだあとも残ればいいなと思って、僕から逃げ出そうとする猫をそれでも必死に撫でていた

僕が生まれたのは全部があるようで何もない8月のある朝だった あの足は傷んだままで治る気配もないけれど、それでも猫を撫でていた

「あ お母さん!」

僕はお母さんのもとに駆け寄ったけど、手は身体をすり抜けていくばかりだった

④メモ:あなたが嘘をつかなくても(2022-5-15)

世界を美しく、鋭角的に切り取った宝石箱のような言葉を見るたびに、いつも違和感を感じていた。世界はもっと複雑なものだろうと。それに、美しい世界から締め出された汚らしい言葉たちは、汚らしい彼らは、汚らしい私は、どうすればいいんだろうと。自分の善性と真実性をなんの仮借もなく信じられるならそれは本当に素晴らしく素晴らしい話だけど、そういった人間が紡ぐ言葉は救いたり得るか?