愛と生きる意味

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極度生殖(しなさい)

 家を出ると果たしていつもの風景が広がっているように見えた。美しい女、下品な音を立てててんとう虫のようにコソコソと動き回る車、抜けるような青空、そしていつもと変わらない俺。ある一点だけが違っていた。
『極度生殖(しなさい)』
 川を挟んで向こう側の巨大な立看板には、何やら見慣れない巨大な文字が刻んである。それはとても美しく巨大なゴシック体だ(それはあまりにも巨大すぎて、俺を攻撃しているみたいだ!)。以前あそこには官能的な美女が体をくゆらす電子広告があった。マリリンモンローのデッドコピーのようなその女は、これまたティモシーシャラメのデッドコピーのような男と身体を絡め、今にも二人はピストン運動を始めそうでいた。

「オゥマイガッーーーーーーーー‼️‼️❣️」
ブライアンフェリーの『TOKYO JOE』と一緒にマリリンが絶叫のような喘ぎ声を上げ、それに当てられた住民はその場で自慰行為を始める。それが日課だった。例えば尻にシャープペンシルを入れる男もいれば、太陽光で熱した鼻くそのクッキーたちをありったけ膣に掻き入れ、地表と一体になろうとする女もいた。これはまさしく革命だった!それぞれが思い思いに自慰行為に励み、木々は歌い、たくさんの喘ぎ声が耳をつんざく。自慰行為はマリリンが絶叫を上げたその日から、みっともない秘儀ではなくなったのだ!とにかく昨日までの広告は、スマートで、キッチュで、イノヴェイティブな代物だった。

 それがなんだと言うのか。今広告に掲げられているのは衣服を乱し挑発的に微笑むマリリンではない。ただ「極度生殖」という聞き慣れない言葉の並びが俺たちを威圧するだけで、そこから何も生まれようがないじゃないか!2068年6月1日制定改正景品表示法によれば、広告とは「エデュケイショナル」で「インクルーシブ」で「イノヴェイティブ」なものでなくてはならない。要は、マリリンとシャラメが自慰行為を「公」に引き摺り出したような革命が必要なのだ。それなのに今の広告は意味不明瞭な文字が並び、ただ街の風景に溶け込みきれない異物がアスペルガー症候群の男性のように浮くのみだった。

 後は簡単だった。数日が経ったが、俺は前と変わらずいつものように学校へ向かう。『極度生殖(しなさい)』はあいも変わらずに街の中心部に掲げられている。なんの役にも立たないゴミがこれだけ目立つところにあるとは、国の衰退の証だろう。唯一変わった点といえば、街角ではもはや自慰行為が行われなくなったことくらいだろうか。人々の顔はどこか苦しげで、男の顔はどことなく美しく見える。自慰行為に革命を起こしたあの広告が全てを総覧せんとする前のむかしは、人々は自らの手で自慰行為をしたと言う。それは異様な多様性を誇り、例えば部屋で一人陰茎を扱くものもいれば、遠くの場所のその時限りの恋人と繋がり、お互いに励む男女もいたと言う。しかし一つ言われていたのは、「男は自慰行為をそう頻繁に行ってはならない」という俗説だ。いわく、自慰行為に励む男は痩せ細った鬱病のナードになる。肌が荒れた鬱病のナードになる。頭が禿げ上がった躁鬱のナードになる。散々な言われようであった。しかしながらマリリンとシャラメの時代になってそんな俗説もほとんどはらわれるようになって、男たちはマリリンの絶叫に合わせてリズミカルに陰茎を扱くようになった。

 そんなことをつらつらと考えているうちに、俺は学校へ着いた。俺はどこか苛立っている(ような気がする)。それはどこか切なくて、ここではないどこかを探してしまうような寂寥感があって、人生という日々に対するちょっとの希望がある苛立ちだ。俺はこの感情をどのように処理すれば良いかが分からず、苛立ちを抑えながらドカッと席についた。
「おはよ〜♪」
後ろの席の女が俺の後ろに座る。こいつは学年でも一番可愛くて、豊満なスタイルを持っていて、全ての楽器が弾けて、全ての学問を高度なレベルで収めている!それと裏腹に、ファンキーな自慰行為をする女でもあった。
「今日の授業なんだっけ?」
俺はこいつに聞く。なんでもこいつは学年でも一番可愛くて、豊満なスタイルを持っていて、全ての楽器が弾けて、全ての学問を高度なレベルで収めているから、俺のこんな質問にも簡単に答えられるのだ!案の定こいつは、
「情報機械処理Aと出生倫理だったはず!」
と答えた。この、学年でも一番可愛くて、豊満なスタイルを持っていて、全ての楽器が弾けて、全ての学問を高度なレベルで収めていて、その裏腹にファンキーな自慰行為をする女は正に俺にとって天女————-angelだった。それは、クレーの『忘れっぽい天使』のようだった。天使はただそこにあり、俺はただここにあり、それだけでいいのだ。そういうわけで、この、可愛く、音を奏で、聡明で、シャラメの声に合わせて決して下品ではない嬌声をあげる女は、俺の救いそのものだった。

 『出生倫理』が始まる。市井では、出生の歴史は巧妙に隠蔽されているというのがもっぱらの噂だ。あの大戦を挟んで出生についての記録は明らかに散逸した。いわく、出生は渡り鳥が運んでくる。出生は砲弾が飛び交う最中に行われる。出生は神によって司られる。—————さまざまな説はあれど、確かなのは、「権力は我々を洗脳し、『出生倫理』などという胡乱な詐欺を働いている。」ということだった。だから俺は授業を聞かない。クラスにも聞いているものなどいない。教師ですら嘘を嗅ぎ取っているから、マトモに授業をする気すらないようだ。ただ一人、あの美しい天使だけが真面目にノートをとっていた。

「じゃあ出生革命について説明できるやついるか〜」
「はい」
「お、じゃあ君で」
「出生革命とは18世紀後半からブリテン島で起こった大革命のことです。今まで人間たちはハンドメイド的に出生されていましたが、これ以降我々は、「出生省」による大量出生が可能となりました。この革命は、ブリテン島および欧州文明を、世界文明の中心に引き上げました。」
「そうだね、これで正解だ。じゃあ「出生省」はどのような革新的技術を使っていたか説明できるか?」
「はい。それは〜」
完全なる出鱈目だ。出鱈目だ。全てが出鱈目だ!本当はこれは産業革命だ。ジェームズワットと、ガリレオと、あと誰かが蒸気機関を発明して、巨大な産業技術をその手に掴んだ英国と、同じ文明圏の欧州が文明の頂点に立ったのだ。また、産業革命は石炭採掘や紡績における要請———「需要」に従って起こったものだ。断じて『出生省』なる眉唾ものの省庁によるものではない。犬のように飼い慣らされた俺たちはその名残すら感じることができないが、かつて産業が自由であったように出生も自由であった。そうこうしているうちに、鼻の下を少し伸ばした無気力な教師は
「うん。よく勉強してるね。」
とだけ言って、その数瞬後にチャイムが鳴って、授業が終わったのだった。

 保健体育の時間がやってきた。木曜日5限のこの時間は、本来ならばこの時間は自慰行為に当てられるはずだった。もちろん普通なら、ダンスや、テニスや、Judoを行う時間なはずだ。しかし最近までこの街では、まるで時報のように毎日午後1時半にマリリンが嬌声をあげていたから、この時間には皆が猿のように自慰行為に励むこととなっていたのだ!その時間は、むせ返るような汗と愛液と精液の匂いが体育館に充満していた。俺はノーマル自慰行為だ。体育館の床に陰茎を擦り付けて素早い射精を狙う。足が速い男がモテるように、射精も早ければ早いほど素晴らしいのは道理だ。俺は巨大な重圧を己が肉棒にかけて、いじめ抜き、そして白濁液の弧を描こうとしていた。しかし俺はどうもこの時間が苦手だったようで、いつも射精に約15分6秒の時間をかけていた。ではその間、女生徒は何をしていたのだろうか?彼女たちも基本的には極めてノーマルな自慰行為に励んでいた。指で陰核を擦り上げて、素早い絶頂を図るというものだ。正しくありがちなやつだ。絶頂の回数が多ければ多いほど評価が高いから、達したフリをするものも多かった。

 ここであの「忘れっぽい天使———angel」がどのような自慰行為に励んでいたか特別に稿を割いてお前らに説明してやろう。その自慰行為は————とてもファンキーで—————ファンタスティックで—————イノヴェイティブだった。彼女はまず、「製作」か何かの授業で作った陰茎の模造物を持ってくる。そしてそれをなんの躊躇いもなく膣内に挿入するのだ!アンッアンッアンッと喘ぐ。その喘ぎ方は他の女生徒の偽物のような喘ぎ声とは比較にならない素晴らしさだ。そこには2020年以来人類が忘れていた「真実味」がある。真の生命がある。上気した彼女の呼吸にあわせて揺れる胸も、震える肢体も、数値化されていない、統計学上ではない美しさだ。あれこそが真善美。同じように自慰に励む男どもは、自分の陰茎に夢中で決して気づかない。まさに俺だけの天使————angelだった。

 そうして授業中だというのに、俺はダンスの練習を黙々としながらイライラしていた。その苛立ちはやはり、どこか切なくて、ここではないどこかを探してしまうような寂寥感があって、人生という日々に対するちょっとの希望がある苛立ちだ。そして俺はやはりこの感情をどう処理すれば良いか分からなかった。悶々とする俺に話しかけてきたのは—————アイツだった。
「どうしたの?元気ないね。」
俺のangelは内心の苛立ちもつゆ知らず俺の額に手を当ててきた。
「っ……大丈夫だから、心配しないでくれ。」
俺はなぜか顔を真っ赤にさせて俯く。なぜ俺は自分の顔が真っ赤になったのか皆目検討もつかなかったが、何故かものすごく切ない気持ちになった。
「やっぱり変だよ。保健室行こ!」
「いや良いって」
「ほらほら」
 アイツは先生に「保健室に連れて行きます!」と言って俺を連れ出した。俺はちょっと抵抗したが、俺より2cmほど身長の高いアイツの手を降りほどく訳にも行かず、しぶしぶ保健室に連れて行かれた。

「大丈夫?」
「……大丈夫。」
「本当に大丈夫?熱あるでしょ!」
「…っ大丈夫なんだって!」
 保健室のベッドに横たえられそうになった俺は、思わずangelの手を振り払ってしまった。ちょっとよろめいて数瞬、床に手をついてしまったangelは、それでも俺を心配してくれた。
「やっぱり今日、いや最近ずっと、どっか変だよ?何かあったか教えてよ」
「切ないんだ」
「切ない?」
「なんか変なんだ。あの看板がなくなってからなんかずっと、どっか切なくて、変で、なんかおかしくなっちゃいそうなんだ!」
「君もなの?」
「え」
「私もあの日からずっと変なの。何か変で、大事なことを忘れちゃってるような気がするの…」
ああ、『忘れっぽい天使』よ!このangelはやはり俺のようにどこか大事なことを忘れちゃってるみたいだ。人は、お互いの欠損を愛しあうものなのだろう。今こそ俺は、この学年でも一番可愛くて、豊満なスタイルを持っていて、全ての楽器が弾けて、全ての学問を高度なレベルで収めている完璧な女を愛せるような気がした。

「なあ」
「なに?」
俺はガバと後ろから抱きつき、angelの耳元で
「俺じゃダメか?」
と呟いた。
「なあ……俺じゃ、ダメなのか?」
「え……」
「好きだ……」
 俺はキツく抱きすくめた。その力はあまりに大きく、俺の愛もあまりにも大きい(それはまるで、100年前のトレンディ・ドラマみたいだ!)。そのうち湧き上がってきた「何か」に我慢できなくなった俺は、本能的に彼女の背中に陰茎を擦り付ける。
「ねえ…」
「なに?」
「私、今まで自慰行為の授業あったでしょ?」
「うん」
「あの時使ってた陰茎は、あなたの陰茎を授業中盗み見て、さりげなくあなたの陰茎を触って、それで作ったやつなの」
雷に打たれた。身体に、電撃が走った!彼女は、俺の陰茎を自分の膣内に入れていたというのか?俺の、俺のことを想って、自慰行為をしていたというのか?俺のように!

「私も好き…」
 そのまま俺たちは保健室のベッドに移動して、本能のままに「何か」を始めた。俺たちは何か世界の真実に触れているような気分だった。世界には俺と君しかいなくて、いつまでも俺たちは一緒にいて、世界はただ真っ白な透明な空間が永遠に続くのだ。俺が君に触れると少し君が微笑み、その度ごとに君の満たされすぎた胸が波打つ。君が俺に触れるとそのたびに君しか見えなくなっていく。もうどうにかなりそうだった。俺は彼女がそうしていたみたいに、彼女の膣内に陰茎を挿入してみようと試みる。

 あれ?あれから何度試みても陰茎は一向に膣内に入らない。その間もお互いで身体を擦り付け合っているから不満があったわけではないが、なにかおかしさを感じていた。なぜ入らないのか俺にはよく分からなかった。焦りが芽生えてきた。彼女はまだ俺の焦りに気づいていない。しかし彼女が求めていることくらい俺には分かる。俺の陰茎を自分の膣内に挿入してほしいことくらい頭脳明晰な俺には分かる!そうこうしているうちに10分も過ぎると、さすがに彼女も気付き始める。そこから30分ほどお互い体勢を変えたりして試してみたけれど、ついぞ俺の陰茎が彼女の膣内に入ることはなかった。

「……ごめん」
俺は絞り出すように言う。
「ううん君のせいじゃないよ。」
彼女は続ける。
「だってこんなこと大人だってしたことないんだもの、私たちが最初にするんだから分かりっこないよ」
「そうだけど……」
「もー怒るよ!」
いたずらっぽく笑う彼女にまた俺は好きになってしまった。
「じゃあまずはなんで入らなかったか考えてみよ!いつもの時となにが違った?」
「違ったと言われてもな」
「例えば動き方とかに違いがあるんじゃないかな?」
 動き方といっても俺はいつも体育館の床に擦り付けているだけだ。君に挿入するのとは訳が違う。

そうこうしている内に終業のチャイムが鳴ったようだ。5時間目も終わりだ。俺は「何か」を少し焦っていた。
「じゃあそっちこそ普段となにが違った?」
「うーん……あ!」
「ん?」
「陰茎さんを見せて!」
ああいいけど……とボロンと彼女の前に陰茎をぶら下げる。
「あ、答え分かった!多分君の陰茎さんが硬くなってないからだと思う!私が使ってた陰茎さんは硬かったし」
 ようやく合点が入った。それか!俺の陰茎はあの最中も一向に柔らかいままだった。それは普段の自慰行為の時と決定的に違っており、それが結果に大きな違いをもたらしたことは言を待つまでもない。俺は、じゃあやってみるよと言って、自分で自分の陰茎を扱き始めた。

 それでもどうしてもうまく行かない。何しろ俺は「あの日」以来自慰行為をしていないのだ。何度陰茎を擦ろうと、美しい彼女の肢体を眺めようと、一向に硬くなる気配もない。俺は挫けそうになりながら20分も陰茎を擦り続けたが、とうとう彼女が暗い顔で
「そろそろ授業に戻ろ?また今度ね?」
と言った。

 絶望、絶望、絶望だ!俺はあなたの膣内に陰茎を挿入したかった。それはあなたも同じはずで、そのことによってこそ俺たちは全ての痛みや苦しみや不全感から解放されて、真の意味で救われるはずだったのだ。俺は断じて認めることが出来なかった。全てが俺たちの中で揺蕩う俺たちのためだけの赦しになる日も近かったのに、それが、それなのに—————————

『極度生殖(しなさい)』

 突如頭の中に、このなんの役にも立つのか分からない広告が流れた。そのとき俺は、思い出した。全てを思い出した。人間はそもそもアダムとイブから始まったこと。陰茎を膣内に入れれば赤子が生まれること、そうやって人類は進化してきたこと。産めよ、増やせよ、地に満てよ。生殖せよ。神はそう仰せになった。これこそが真実だったのだ。出生省などやはりなかった。俺たちのための生殖があった。今こそ俺は、俺たちは、生殖の自由を自らの手に戻さなければならない。自慰行為などというチャチな代物ではなく、真の生殖をしなければならない!極度生殖(しなさい)、極度生殖(しなさい)。極度生殖(しなさい)。美しく生殖しなさい。極度生殖しなさい。真の生殖をしなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖せよ。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。生きなさい。極度極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。生殖しなさい。産みなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。育てなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖せよ。生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度極度生殖しなさい。生殖。極度生殖しなさい。生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖しなさい。極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖極度生殖————————

 俺は不自然に笑ってゆらりと立ち上がった。そして乱暴に『イブ』の服を脱がせた。
「キャッ!」
「これから俺が世界の全部を教えてあげるよ。」
「世界の全部?」
 俺も服を全部脱ぎ捨てた。さっきまで萎びていた陰茎は雄々しく反り立ち、今にも世界の天頂を貫きそうであった。
「行こう」
「えっ?」
「君に見せたいものがあるんだ」
 君の手をがっしりと掴んだ俺は、お互い全裸のまま、6限のチャイムが鳴って皆が帰り支度をしだした学校を駆け抜ける。それはとても速くて(昔いたカール・ルイスウサイン・ボルトより速い)、俺たちの姿は果たして追い縋ろうとしてもすぐ見失ってしまうようだった。そのうち俺たちの身体には少しずつ体毛が生え、四足で走るようになっていき、いつの間にか狼の姿に変貌していたが、それにも構わず走り続け、走り続け————夕陽の根もとに消えて行ったのだった。