オタクの人生は瞬速の光だ。女しか出ないアニメとか、女がみんなヒョロヒョロの主人公に恋をしているアニメとか、そんなのを見ていたら30歳になる。ピクシブのポルノや、erocoolの無料ポルノを読んで珍棒を撫でている。射精。すると40歳だ。
俺はそんな自分を変えたい。そう思って旅をすることにした。旅とは、気持ち悪く、何も成していない非正規雇用のオタクでも何かを達成した気になれる。変な場所に行ってツイッターにアップロードすれば、自分が特別な体験をしていると思える。そういうものだ。だから変な顔に似合わず、オタクの間で旅は大人気のレジャーだ。その例に漏れず、俺も旅を選択した。もちろん、旅をしたことでモテモテになるはずもない。それでも、自分の何かが変わると思った。
はじめに
バンジージャンプを飛んだので感想と記録を備忘録的に記そうと思う。文学的修辞をなるべく排除して、箇条書き形式で、その時思ったことをそのまま書くことを意識した。
オタクの人生はいわく「瞬速の光」であり、山間部への旅行を好むオタクは非常に多い。またああいったアクティビティは身体感覚が薄いオタクみたいな人種ほど楽しめる(恐怖心もぶっ壊れるので)傾向が強そうなので、当然バンジージャンプをしたことのある読者も多いかもしれないが、ぜひ読んでいってもらいたい。
前日までの記録
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友人からバンジージャンプに誘われ二つ返事で了承。特に深く考えていない状態。
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別の友人にそのことを話すと「人生変わっちゃうじゃんwwこれで突然意識高い系キャラとかになったらやだよww」と言われた。基本的な安全が保証されているなかで飛び降りることがそこまで重大事だとは思わず、心境の変化なども無いとタカをくくっていたため「ンな訳ねーだろww」のような返答をした覚えがある
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前日は少しバンジージャンプについて調べた(完全に友人に受け身で誘われたため、どこのバンジージャンプ場に行くのかもよく知らなかった)。若干怖くなった。
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しかしながら概して現実感がなく大して恐怖心も湧かないといったところ。
当日(飛び降り前)の記録
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友人と合流して車で向かう。本気でビビっている友人1人、大して怖がっていない友人1人、俺の3人。
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場所に到着、遠景から見える飛び降り場の高さにちょっとビビる。ただまだ怖くない。
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受付後流れ作業のように飛び降り場に連れて行かれる。ここら辺の技術はプロフェッショナルを感じた。ちょっとした洗脳に近いと思う。
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先述の、ビビってるやつ、俺、大して怖がっていないやつの順で飛び降りることになった。ビビってるやつはそれでも根性があった(というよりはスタッフの誘導技術が高過ぎたのか?)ので、カウントダウン後普通に飛び降りていた。
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飛び降りてからややあってか細い絶叫。トラウマみたいな顔つきで吊り上げられてきて流石に恐怖心が高まる。
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スタッフに誘導されて飛び降りる直前のところまで来たところで、足がすくむ。スタッフに促されつま先を足場から少し出したところで恐怖心が最高潮に。
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ただ跳べないほどビビっていた訳でもなかったし、ここでチキってたら際限なく恐怖心が上がって本気で終わるなという直感があったので、普通に飛び降りた。
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ただこれも後で考えてみると、自分の自由意志というよりはスタッフの誘導技術の産物なのだろうと思った。
当日(飛び降り中/飛び降り後)の記録
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まず飛び降り中に意識を失う自殺者がどうとかいうアレ、普通に嘘やね
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自分でも驚くほど野太い絶叫が出てビックリした。「死ぬゥゥゥゥゥ!」とか叫んでて、こんな時にもそんなネガティブなワードしか吐けないのかと、絶叫しながら10%くらい自己嫌悪に陥ってた。
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ジェットコースターよりバンジージャンプのほうが怖くなかった。これには理由があるみたいで、バンジージャンプは頭から落下するので、ジェットコースターに乗る時に起きる内臓の浮遊感がかなり軽減されるらしい。筆者はあの浮遊感が若干トラウマになっているので尚更だったのだろう。怖かったけどそこまで怖くなかった。
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最初飛び降りたときよりも紐がバウンドしている時の方が怖かった。トランポリンみたいなバウンドというよりは、不規則な自由落下を何回も繰り返している感じで、無限回死んだ気になれる。また、人間は不確定なものを嫌がる傾向がある。最初の飛び降りは、自分の行動(飛び降り)によって起きた正当な結果という趣があるが、バウンドしている最中はカオス様にたわむ紐が全ての命運を握っている感じがするため、そこの違いもあるかもしれない。
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最後の方はだいぶ余裕が出てきて上の連中に手を振ったりピースしたりしていた。怖いと楽しい半々くらいか。
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ややあって吊り上げ作業が始まったのだが、ここが一番怖かったかもしれない。地上付近の高度からだんだん、高層ビル並みの高度に命綱一本で上げられるのはまあまあキツいものがある。他の連中もここが一番怖かったかもしれないと、似たようなことを言っていた。
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吊り上げ後は、トラウマを負ってマトモに人が落ちる様を見られなくなったビビり君のかわりに3人目を撮影していた。その後も友達と飯食ってそこそこに自然を楽しんで帰ったのだが、特段何かが変わった感じは(少なくとも自覚の上では)なかった。ビビり君も数時間したら平常に戻っていた。麻布競馬場の何かのエピソードに、『ウユニ塩湖行ったけど人生変わらなかった』みたいなやつがあったが、予想通りバンジージャンプでは人生変わらなかったようだ。
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「怖かったけどそこまで怖くない」「怖いと楽しい半々くらい」「別に人生は変わらない」ここら辺3つが教訓めいた何かだろうか。ただバンジージャンプが終わったあと、突然今まで敬遠してきた(リリックが真人間すぎて)Official髭男dismが心の奥深く染み渡り、聴きながら帰ってきたので、深層心理では何か変化があったのかもしれない。あと筆者は概して人生に対する当事者意識が欠如しており、そこら辺の冷笑的態度もバンジーで人生が変わらなかった要因の一つかもしれない。