足立健

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敬虔な痛みだけを抱いて(2022-4-27)

光が向こうで瞬いているから俺はのそりと起き出した。草原では常に天敵に目を配っていないといけなくて、あれはおおかたキラリと反射する捕食者の水晶体だろう。痛みはいつもよそよそしく俺にのしかかってきた。踏みしめた地面の痛み、針山のように煌めく草々に千々に破れる柔な皮膚、目の前で俺の代わりに食われた友。その全てを背負って俺は歩いて行かなきゃいけない。夜はいつも安心する。俺が死んでもその痛みを見るものがいないだろうから。捕食者の奥深くには剥き出しの生存本能だけがあり、俺は瞳の奥の躊躇を覗くまでもなく死んでいくことができる。人間はさしずめ墜落するイカロスのようだ。光に向かって落ちていく。俺は救いに近づいていると錯覚する。痛みはどんどん増していく。しまいに俺は光に焼きつくされてしまう。あるいは光そのものとなる。光は幻惑で、昼は破滅だ。夜は救いで、俺はいつも敬虔さだけを足跡に残していた。

 

痛みは常に俺につきまとう。俺はしっかりと足を踏みしめて空を見上げている。いつか俺には羽根が授けられて、広い青のなかでさみしさだけを感じられるのだろうか。